福岡県小学校長会・教頭会

校長会設立:昭和21年1月26日(平成29年度校長会員数:724名)
福岡市中央区天神4丁目8-10 都久志会館5階
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調査研究部

研究主題

「豊かな社会力を身に付けた子どもを育て,信頼に応える学校をつくる校長の理念と指導性」

    1. 研究主題設定の背景と方向性 全国連合小学校長会が,平成25年度から掲げている研究主題は次の通りである。

       「新たな知を拓き,人間性豊かな社会を築く日本人の育成を目指す小学校教育の推進」

      この研究主題には,将来の予測が困難な複雑で変化の激しい「知識基盤社会」を生き抜く力を育てなければならないとの強い思いが込められている。福岡県小学校長会においても,知識基盤社会を生き抜く力を育成することの重要性を捉え,より現代的な課題に対応し,新しい社会の形成主体となって生きる力として,門脇厚司氏が提唱する「社会力」に着目するとともに,国立教育政策研究所がまとめた「21世紀型能力」を踏まえて研究を進めてきたところである。このような中,昨年8月に中央教育審議会教育課程企画特別部会が2030年の社会を想定して,教育課程を通じて初等中等教育が果たすべき役割を論点整理として示した。そこでは,新しい学習指導要領等の在り方について,「社会に開かれた教育課程」を実現するという理念のもと,育成すべき資質・能力についての基本的な考え方とともに,カリキュラム・マネジメントの重要性について示している。これは,これまでのコンテンツ(内容)からコンピテンシー(資質・能力)を重視する教育への転換であり,その育成に向けてカリキュラム・マネジメントを重視した学校経営の展開が一層重要になることを示すものである。さらに,論点整理では,学校の意義を社会への準備段階であるとしながらも,「子供たちに,新しい時代を切り拓いていくために必要な資質・能力を育むためには,学校が社会や世界と接点を持ちつつ,多様な人々とのつながりを保ちながら学ぶことのできる,開かれた環境となることが不可欠である」としている。つまり,豊かな社会力を身に付けた子どもの育成に向けた考え方や取組は,新しい学習指導要領等が目指す基本的な在り方と多くの点で合致している。
      以上のことから,論点整理に示された次期学習指導要領等の理念や在り方を踏まえながら,本研究を推進していく。

    2. 主題の意味(1)豊かな社会力を身に付けた子ども
      これまでの研究では,豊かな社会力を支える資質・能力を国立教育政策研究所の「21世紀型能力」としてきたが,論点整理で示された3つの資質・能力は,それを含め,海外の事例や先行研究を分析し,整理した要素であり,学力の3要素も含み込むより大きな概念であると言えよう。次期学習指導要領との整合性を担保し,研究の深化を図る意味から豊かな社会力を支える資質・能力を論点整理で示された3つにシフトする。

       論点整理で示された3つの資質・能力を活用し、人とつながり、周りの人と協力し、身近な自分の生活環境をよりよくしたり、創り出したりする子ども

      論点整理に示された三つの柱(資質・能力)は,以下のとおりである。

      ①「何を知っているか,何ができるか(個別の知識・技能)」
      各教科等に関する個別の知識や技能などであり,身体的技能や芸術表現のための技能等も含む。
      ②「知っていること・できることをどう使うか(思考力・判断力・表現力等)」
      問題発見・解決,共同的問題解決のために必要な思考力・判断力・表現力等。
      ③「どのように社会・世界と関わり,よりよい人生を送るか(学びに向かう力,人間性等)」
      メタ認知に関するもの,多様性を尊重する態度と互いのよさを生かして協働する力など,人間性等に関するもの。①・②の資質・能力を働かせる方向性を決定付ける重要な要素。

      豊かな社会力を身に付けた子ども また,これらの資質・能力が人との協働や生活創造に活用されるようになるには,3つがバランスよく調和的に育まれることが重要となってくる。個別の知識・技能といった基礎的リテラシーは,生活創造のような質の高い問題解決において必須のものである。しかし,それを問題解決において,どのように使うのかは,思考力・判断力・表現力のような汎用的な認知スキルによって見極められる。また,基礎的リテラシーや汎用的な認知スキルを適切にどのような方向で働かせていくかを決定付ける上で,メタ認知や人間性が重要な役割を果たす。このように,3つの資質・能力は互いに密接な関係があり,調和的に育成された状態こそが,豊かさなのである。豊かな社会力が身に付いた状態をイメージ図として示す。

(2)信頼に応える学校をつくる校長の理念と指導性
本研究主題から信頼に応える学校を想定すると,豊かな社会力を身に付けた子どもの育成を,保護者,地域住民と共通の目標としている学校であると考える。そのために校長は,学校経営の核となる教育課程をマネジメントすることにその指導力を発揮することが求められる。論点整理では,子どもたちが,身近な地域を含めた社会とのつながりの中で学び,自らの人生や社会をよりよく変えていくことができるという実感を持つことは,未来に向けて進む希望と力を与えることにつながるとしている。そして,そのためには教育課程を介して社会や世界との接点を持つ「社会に開かれた教育課程」であることの重要性に言及している。このことは,当然,豊かな社会力の育成においても重視すべき着眼点であると考える。では,「社会に開かれた教育課程」をマネジメントする上で大切にしたい視点とはどのようなものであろうか。まずは,以下の3点からマネジメントを考えていく。

3つの資質・能力を身に付ける過程や結果において、子どもが社会や人々とのつながりを実感する。
3つの資質・能力を発揮して、子どもが社会や自他の生活をよりよく変えられることを実感する。
3つの資質・能力の育成に向けて、教師、保護者、地域住民がつながりを構築する。

【引用・参考文献】
○論点整理 中央教育審議会教育課程企画特別部会  2015.8
○知識基盤社会を生き抜く子どもを育てる 奈須正裕編著 ぎょうせい 2014.7